近年の彫刻表現は、従来の石彫、木彫、塑像、金属といった枠にとらわれず、映像やパフォーマンスもその一つとして多種多様な媒体を介して行われている。彫刻表現において素材が氾濫する中で、今一度 「彫刻表現における素材とは何か」 を考察し、その見解を示す必要がある。本展覧会では 「素材に問う」 と題して、各々の作家は素材と対峙し表現へ至るまでのプロセスにおいて、素材から作品へと変貌する瞬間を模索する。金沢美術工芸大学の浜田周准教授の推薦により同大学彫刻専攻大学院生３名、東京藝術大学美術学部彫刻科の林武史教授の推薦により同大学彫刻科大学院生３名が作品を展開する。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　企画 ： 金沢美術工芸大学彫刻専攻　浜田周研究室
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　協力 ： 東京藝術大学美術学部彫刻科　　　　　　　　

中田龍佑
　感情は常に自分の中で生まれては消えていく。その感情はいったい何が元となっているのだろうか。私は自分の中に生まれる感情が感情になるまでの過程のほんの一部を切り取り、その現象に想起されるイメージを立体として表現することを研究している。

丹羽啓
　めまぐるしく変動する現代社会において、モノが私たちに様々な様相を見せる。それらのモノを所有し生産する中で生じるモノとヒトとの相互関係やモノとヒトとの境界、距離について考察し、自然物である石を用いて視覚化する。

服部達也
　人同士が何らかの関係を持つとき、そこに各々が持つ領域がどう反映されるのか。現代の人々が必要とする間隔というものを追求し、作品へと展開する。

丸山太郎
　モチーフから意味を剥がしたり、繋ぎ変えると見え方は変わります。イメージの足湯をズラしたり無くしたりすることで、あるものとあるものの間にあるもの、もしくはその関係の構造がもたらす効果を明らかにしていきたいです。

山崎稚子
　「人」 に興味があり、人と人との関係性や人がもつ緊張感を、彫刻という形で表現する事に魅力を感じています。

島田佳樹
　人が持つ記憶または時間の中で変化し不安定であり続ける 「輪郭」、「境界」 に奇妙な魅力を感じ、大きなテーマとして制作しています。